TIG溶接について

この度はご覧いただきありがとうございます。弊社では日ごろから手摺組立など、人の手に触れる部分の溶接はTIG溶接を行っておりますので、その内容をまとめてみました。TIG溶接機の設定や操作はメーカーによって微妙に異なることがありますが、少しでも参考になりましたら幸いです。それでは、どうぞお付き合いよろしくお願いします!


1. TIG溶接機の適切な設定

TIG溶接機の設定は素材や板厚に応じて調整することが重要です。以下に基本的な設定を示します。


一般的な設定

薄板: 低電流・低電圧が一般的です。

例:1.0mmの薄板の場合、電流50~70A、電圧10~14V程度。

厚板: 高電流・高電圧が一般的です。

例:5.0mmの厚板の場合、電流150~200A、電圧16~20V程度。


2. 電極の種類と選択

TIG溶接では、主にタングステン電極が使用されます。以下に代表的な電極の種類を示します。

純タングステン電極: アルミニウム溶接に適しています。

セリウムタングステン電極: 低電流のステンレス鋼や炭素鋼に適しています。

トリウムタングステン電極: 高電流の溶接に適しており、安定したアークが得られます。


3. 溶接面の清掃

溶接面の清掃は品質に直結するため、徹底して行います。

油分やグリースの除去: 脱脂剤や溶剤を使用して布やペーパータオルで拭き取ります。

錆や酸化物の除去: ワイヤーブラシやグラインダーを使用して物理的に除去します。

汚れや塵の除去: 圧縮空気やブロワーを使用して表面の塵や汚れを吹き飛ばします。


4. トーチの角度

トーチの角度を適切に保つことが重要です。通常、約10~15度の角度で進行方向に対して傾けます。


5. 適切なトーチの距離

トーチのノズルとワークピースの間の距離を一定に保ちます。通常、2~5mmが理想的です。


6. 適切な溶接速度

溶接速度を一定に保つことが重要です。速すぎると溶け込みが浅く、遅すぎると過熱やビードの形状が悪くなります。


7. 安定した手の動き

手を安定させ、一定のリズムでトーチを動かすことが大切です。両手で支えると安定しやすくなります。


8. 正しいガス流量

シールドガスは通常、10~20リットル/分が適切です。使用するガスによって調整が必要です。

アルゴン: 10~20リットル/分が一般的です。


9. 適切な保護具の使用

溶接面の保護や手の保護、換気を十分に行い、健康と安全を守ります。


10. 初期設定の目安


11. 各板厚の作業中の注意点

板厚~9mm

使用するガスは、通常はアルゴンが一般的です。

溶接速度や溶接姿勢(水平、垂直、上向きなど)も設定に影響を与えるため、実際の作業条件に応じて調整が必要です。


板厚12mm

溶接熱の管理が重要です。過熱や歪みを防ぐために、適切な溶接手順を守り、均一な熱分布を心がけてください。


板厚16mm以上

溶接熱の管理がさらに重要です。多層溶接(多層ビード)やバッキングストリップの使用を考慮することもあります。

プリヒート(予熱)を行うことも有効です。予熱温度は材料や条件により異なりますが、150~200℃程度が一般的です。


板厚19mm以上

クラック防止のために、特に注意深く作業を進めることが重要です。


これらのポイントを押さえて、練習を重ねることでTIG溶接の技術を向上させることができます。


終わりに

TIG溶接は練習・実践・経験を積めば積むほど上達していくスキルです。この記事が皆様のスキルアップの取っ掛かりに少しでも助力になっていれば幸いです。また、弊社の一員としてスキルを磨く仲間も随時募集しています。ご興味のある方は弊社へご連絡下さい!


次回はプラズマ切断機について解説予定です。お楽しみに!