この度はご覧頂きありがとうございます。
弊社では日ごろから半自動溶接を行っておりますのでそちらの内容をまとめてみました。使用される溶接機のメーカにより設定が微妙に変わってきますが少しでも参考になりましたら幸いですのでどうぞお付き合い宜しくお願いします!
1. 半自動溶接機の適切な設定
2. ワイヤーの種類
3. 溶接面の清掃
4. トーチの角度
5. 適切なトーチの距離
6. 適切な溶接速度
7. 安定した手の動き
8. 正しいガス流量
9. 適切な保護具の使用
10. 初期設定の目安
11. 各板厚の作業中の注意点
1. 半自動溶接機の適切な設定
電流や電圧、ワイヤーの送給速度を適切に設定します。素材や板厚に応じて調整することが重要です。
・一般的な設定
薄い板では低電流・低電圧、厚い板では高電流・高電圧が一般的です。
例:1.0mmの薄板の場合、電流60~80A、電圧16~18V程度。
例:5.0mmの厚板の場合、電流180~220A、電圧22~26V程度。
・ワイヤーの送給速度
使用するワイヤーの直径と材料に依存します。
例:0.8mmのワイヤーの場合、3~8m/min程度。
例:1.2mmのワイヤーの場合、5~10m/min程度。
2. ワイヤーの種類
半自動溶接(MIG/MAG溶接)で使用されるワイヤーの種類は、主に以下の通りです
・ソリッドワイヤー(Solid Wire)
炭素鋼用(ER70S-6など)
ステンレス鋼用(ER308Lなど)
アルミニウム用(ER4043など)
銅および銅合金用(ERCuSi-Aなど)
・フラックスコアードワイヤー(Flux-Cored Wire)
自己遮蔽型(Self-shielded flux-cored wire):ガスシールドが不要
ガスシールド型(Gas-shielded flux-cored wire):外部ガスシールドが必要
・金属芯ワイヤー(Metal-Cored Wire)
高効率で、スパッタが少ないのが特徴
主に炭素鋼および低合金鋼用
写真は弊社使用フラックス入りワイヤー
3. 溶接面の清掃
・油分やグリースの除去
脱脂剤や溶剤(例えばアセトン、イソプロピルアルコールなど)を使用して、布やペーパータオルで油分やグリースを拭き取ります。
・錆や酸化物の除去
ワイヤーブラシやグラインダーを使用して、錆や酸化物を物理的に除去します。ステンレス鋼の場合は、ステンレス専用のワイヤーブラシを使用します。
サンドペーパーや研磨パッドを使用しても良いです。
・汚れや塵の除去
圧縮空気やブロワーを使用して、表面の塵や汚れを吹き飛ばします。圧縮空気を使用する場合は、水分が含まれていないことを確認してください。
・溶接直前の確認
最後に、溶接面が完全に乾燥していること、そして目に見える汚れがないことを確認します。
4. トーチの角度
トーチの角度を適切に保つことが重要です。通常、約10~15度の角度で進行方向に対して傾けます。
5. 適切なトーチの距離
トーチのノズルとワークピースの間の距離を一定に保ちます。通常、6~10mmが理想的です。
6. 適切な溶接速度
溶接速度を一定に保つことが重要です。速すぎると溶け込みが浅く、遅すぎると過熱やビードの形状が悪くなります。
7. 安定した手の動き
手を安定させ、一定のリズムでトーチを動かすことが大切です。両手で支えると安定しやすくなります。
8. 正しいガス流量
シールドガスは通常、10~20リットル/分が適切です。使用するガスによって調整が必要です。
二酸化炭素 (CO2):10~15リットル/分。
混合ガス (Ar+CO2):15~20リットル/分。
9. 適切な保護具の使用
溶接面の保護や手の保護、換気を十分に行い、健康と安全を守ります。
10. 初期設定の目安
11. 各板厚の作業中の注意点
・板厚~9mm
使用するガスは、通常は炭酸ガス(CO2)または混合ガス(アルゴン+CO2)が一般的です。
溶接速度や溶接姿勢(水平、垂直、上向きなど)も設定に影響を与えるため、実際の作業条件に応じて調整が必要です
・板厚12mm
板厚12mmの場合、溶接熱の管理が重要です。過熱や歪みを防ぐために、適切な溶接手順を守り、均一な熱分布を心がけてください。
・板厚16mm以上
板厚16mm以上の場合、溶接熱の管理がさらに重要です。過熱や歪みを防ぐために、適切な溶接手順を守り、均一な熱分布を心がけてください。
板厚が非常に厚いため、多層溶接(多層ビード)やバッキングストリップの使用を考慮することもあります。
プリヒート(予熱)を行うことも有効です。予熱温度は材料や条件により異なりますが、150~200℃程度が一般的です。
溶接速度や溶接姿勢(水平、垂直、上向きなど)も設定に影響を与えるため、実際の作業条件に応じて調整が必要です。
各層の溶接後にスラグを完全に除去し、良好な溶接継手を得るために清掃を徹底してください。
・板厚19mm
板厚19mm以上の場合、クラック防止のために、特に注意深く作業を進めることが重要です。
これらのポイントを押さえて、練習を重ねることで半自動溶接の技術を向上させることができます。
終わりに
半自動溶接は練習・実践・経験を積めば積むほど上達していくスキルです。
この記事が皆様のスキルアップの取っ掛かりに少しでも助力になっていれば幸いです。
また、弊社の一員としてスキルを磨く仲間も随時募集しています。
ご興味のある方は弊社へご連絡下さい!
次回はTIG溶接機について解説予定です。お楽しみに!